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チャイナ・レポート(Web版)

包括的金融政策の発動(2025年7月1日号掲載)

拓殖大学大学院 客員教授  田中 修

 25年1〜3月期のGDP成長率は実質5・4%であり、24年10〜12月期と同率になった。しかし、これは前年同期比の成長率であり、先進国が採用している前期比成長率(4月公表時点)でみると、1〜3月期は1・2%(年率換算約4・8%)と、24年10〜12月期の1・6%(同約6・4%)より鈍化し、年間目標5%を割り込んだ。
 これを需要別でみると、1〜3月期成長率への最終消費の寄与率は51・7%、投資の寄与率は8・7%、純輸出(輸出〜輸入)の寄与率は39・5%である。米中の関税戦争が激化の様相を示し、3月に駆け込み輸出が発生したことが成長を支えたのであり、5・4%の成長のうち、内需の寄与度は3・3ポイントにすぎなかった。
 4月26日、党中央政治局会議は、当面の経済情勢と経済政策を分析・検討した。会議は、「わが国経済が持続的に回復上昇・好転するための基礎を一層強固にする必要があり、外部からの衝撃の影響が増大している」とし、対策案を十分に準備し、より積極的な財政政策と適度に緩和した金融政策をしっかり十分活用しなければならないとした。
 これを受け5月7日、人民銀行の潘功勝行長は、市場・予想の安定を支援するための包括的金融政策を発表した。これには、次の10項目の具体的政策がある。

①預金準備率を0・5ポイント引き下げ、市場に長期流動性約1兆元を提供する(15日実施)。

②預金準備金制度を整備し、自動車金融会社・金融リース会社の預金準備率を現在の5%から0%まで段階的に引き下げ、自動車消費・設備更新等への貸出供給能力を増強する。

③政策金利(公開市場7日物リバースレポ金利)を0・1ポイント引き下げる(8日実施)。これにより、5月20日、貸出プライムレートは1年物3%、5年以上物は3・5%と、いずれも0・1ポイント引き下げられた。

④構造的金融政策手段の金利を0・25ポイント引き下げる(7日実施)。これにより、毎年銀行の資金コスト約150~200億元の節約が可能となる。

⑤個人住宅公的積立金貸出金利を0・25ポイント引き下げる(8日実施)。
 これにより、毎年庶民の公的積立金貸出利息支出の節約は200億元を超える。

⑥科学技術イノベーション・技術改造再貸出を3000億元増やし、現在の5000億から8000億元に増やし、引き続き「大規模設備更新・消費財買換え」政策の実施を支援する。

⑦5000億元の「サービス消費・高齢者介護再貸出」を設け、金融機関が宿泊・飲食、文化・スポーツ・娯楽、教育等のサービス消費重点分野と高齢者介護産業への金融支援を増やすよう奨励・誘導する。
 金利は年率1・5%、期間1年で2回延長可能であるが、最長使用期間は3年を超えない。対象は政策性銀行・国有商業銀行・郵政貯蓄銀行・株式制商業銀行等21の全国レベル金融機関と北京銀行・上海銀行・江蘇銀行・南京銀行・寧波銀行の計26金融機関であり、政策執行は2027年末までである。これらの機関が行った政策支援分野に合致する貸出に、貸出元本の100%が再貸出される。

⑧農業支援、小型・零細企業支援再貸出を3000億元増やし、再貸出金利の引下げの政策と協同効果を形成し、銀行の農業関連、小型・零細企業と民営企業への貸出拡大を支援する。
 とりわけ中小民営企業への貸出実施拡大を一層支援する。

⑨資本市場を支援する2つの金融政策手段を最適化し、5000億元の証券・基金・保険会社スワップファシリティーと3000億元の自社株買戻し・持ち株増加再貸出の額を併せて使用し、総額8000億元とする(7日実施)。
 自社株買戻し・持ち株増加再貸出の最長期間を1年から3年に延ばし、銀行が信用貸出を行うよう奨励し、上場会社が自社株を買い戻し、持ち株を増やす際の自己資金比率の要求を30%から10%に引き下げる。

⑩科学技術イノベーション債券リスク分担手段を創設し、中央銀行が低コストの再貸出資金を提供して、地方政府・市場化信用補完機関等と協力し、共同担保等の多様化した信用補完措置を通じて、科学技術イノベーション債券の一部デフォルト損失リスクを分担できるようにし、科学技術イノベーション企業と株式投資機関の低コスト・長期の科学技術イノベーション債券発行による資金調達を支援する。


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